「journey」

2020年が終わろうとしている。毎年感じることだが、今年は特にあっという間に月日が過ぎ去っていった。

旧暦新年に「青山ブッククラブ回」でスタートした詩画集出版記念EXHIBITION。オープニングのARTSHOWで幕を明けたがその後コロナで世界が湧き立ち、1ヶ月後のクロージングのARTSHOWは延期になり、その先決まっていたEXHIBITIONやARTSHOWはすべてキャンセルになった。とても残念だったが「これは私にとってはじっくりと創作に没頭する時間が与えられたということか」と思い集中して励んでいた矢先、アライグマが3ヶ月もの間、屋根裏に住み着き子供まで産んでしまい中々出て行ってくれずに悪戦苦闘するという日々が続いた。やっと彼らが去って行った後にはNOBUYAの旅立ちから丸3年を迎える頃になり、自分自身を色々とクリーニングする時期でもあり、彼の喉仏をやっと大地に還すこともできた。形が一切なくなったことでNOBUYAはより鮮明に私の心の中で生き続ける魂となった。

その後にブッククラブ回から延期になっていたARTSHOWの依頼があり、秋分の日にその機会が与えられた。待ちに待った開催を回の方々も喜んでくれて、私もずっとアトリエに籠っていたので久々に表現することができて本当に嬉しかった。するとその2週間後に我が家のオオカミ犬DONが突然「あと24時間以内の命です」と宣告され、緊急大手術に。奇跡の生還を遂げ8日間の入院を経て無事に退院してきた。その8日間はNOBUYAが旅立って以来、初めて1人で過ごす時間となった。なんともいえない感覚だった。DONの生死に関わる出来事だっただけに、NOBUYAの最後の瞬間がフラッシュバックしていたためか、自分でも驚くほどそのショックが大きかったようで精神的にかなりダメージを受けていたことを自覚した。NOBUYAの口癖に「オレたち、明日は死んでるかもしれないんだぜ」という言葉があったが、確かにその通りだし順番でいけばDONが先なのだが、その時は突然やってくるかもしれないということを今回の件で改めて思い知らされた。そういう意味では「本気で覚悟する」という経験を前もってさせてもらえたということもできる。でも何よりDONがいてくれたお陰でNOBUYAの突然の旅立ちからも、立ち直ることができていたんだということを深く深く思い知った時間だった。死の淵から還ってきてくれたDONには日々愛おしさが増していく一方だ。

そんなDONのことを知った上野原にできたばかりのギャラリー「isyokujyu」のオーナー「ダニエル」から「何か力になりたい」と突然のEXHIBITIONの依頼があり、予期せぬ開催ができたことも本当にありがたかった。そして急遽決まったにも関わらず、この状況の中で予想以上にお客様が来てくれたことにも感動だった。近隣の友人達が駆けつけてくれたことにはとても励まされた。都内から電車ではるばる来てくださるファンの方々がいたり、他県からはるばる車を運転してきてくれた方々がいたり、朝の散歩でいつも挨拶を交わすおじさまおばさま方が誘い合わせて来てくれたりした。特に家の前でいつも畑仕事をしている大屋さんの義理のお兄さんが「オレは絵のことはさっぱりわからないから行かないよ」と言っておきながら突然観に来てくれただけでも驚いたのに、近所の方々に「とにかくあんたも観に行った方がいい。すごいから!」と宣伝してくれていたという話を聞いた時は胸がジンと熱くなった。屋久島の親友「奈央」からも「∀はいつもみんなに見守られ助けられてるよね。すごいわー!」と感心されたが、本当にただただ感謝と喜びの1ヶ月間だった。最終日の2日間はダニエルの提案で詩の朗読とインディアンフルートの演奏という、今までで一番シンプルなARTSHOWを初めてのソロでやることになったが、自分の中でも何か新たな一歩を踏み出せたような感覚があってとても新鮮だった。これからは従来のことがらに捕われることなく自由に表現を楽しんでいっていいんだと思えた幸せな体験だった。

先日、友人達の忘年会に誘われ行ってみると音好きの面々が思い思いにセッションをしていた。マイクを差し出され無意識に即興で出てくるままに詩を歌った。大調和の中で漂う感覚は本当に気持ち良かった。そこにあった一枚のオラクルカードを引いてみると「journey」という言葉が現れた。「時は来た。波に乗っていきなさい」とのメッセージ。ゼロ地点である今ここから、インスピレーションとともに新しい年を歩んでいこうと思う。

朝、目が覚めるたびに「愛しているよ」と自分に微笑みかけながら….。