「DONの誕生日」

4.20は我が家のオオカミ犬DONの誕生日。今年で11才である。

先日、初めてシニア犬のための健康診断というものを受けたのだが特に問題はなく安心した。大型犬の11才は人間にするとなんと80才になるというからビックリ!
だが獣医さんに「11才にしては若い!」と逆に驚かれる。確かに散歩をしていて年齢を聞かれるたび「あら若いわねー」と皆さんに言われるのだ。それは嬉しいことである。
きっとその理由は7才までいた屋久島の修業時代とは180度環境が代わり、毎日2回の散歩で2~3時間は歩き、家の中を自由に歩き回り、寝室のベッドでぐっすり眠っている
ということもあるだろうが、とりわけ友人の「たま」と暮らしているシバ犬の「茶太」との関係がとても大きいと思う。茶太はDONの唯一の友達で親友だ。年齢は3才と若く、全身バネのように弾みながらコロコロと転がっている遊び盛り。人間でいうと30才以上も離れた間柄だが森に入ると一緒に全力疾走し、家の中では廊下を駆け回っていたかと思うとプロレスが始まる。そのプロレスも最初の頃は体格が違い過ぎてぎこちない動きだったのが、今ではとても洗練されてまるで舞踏のように美しいのだ。お互いの間合いを完全に習得したのだろう。そしていつの間にか気がつくと体を寄せ合い眠りこけている。その姿がなんとも愛らしく、ずーっと見ていられるほどなのである。そして人間の親子なんかもそうであるように片方が寝返りをうつと、もう片方も寝返りをうつというように寝姿がそっくりになってくるのだ。一緒に散歩して帰ってくると真っ先に茶太がリビングへ走って行き水をガブガブ飲む。それを後ろでDONがいつまでも優しく待っている。そしてそのDONの後ろ姿を見ていつもジーンときてる私がいるのだった。(完全な親バカです!)

DONが貰われた先から帰って来る運命だったこと。それは今でも本当に不思議だったなと思う。

龍の島ともいわれる屋久島に貰われて行く直前に、森の土の中から年代もののドラゴンの置物を掘り起こしたDON。6匹兄弟で生まれて赤ちゃんだった子犬達の写真を友達がいっぱい撮ってくれたのだが、今見てみるとどれもこれもなぜだかDONばかりが一番多く写っているのだ。そして先日「nociw gallery」にはるばる岩手から来てくださったお客様が選んだ絵が母親のnociwと子供達を描いたものだったのだが、改めて見てみるとnociwの鼻先に一番近くで戯れているのがDONだったことがわかり驚いた。兄弟の中で一番最後に貰われていったので、みんなは3ヶ月以内に旅立っていったのに私とNOBUYAとnociwとDONは7ヶ月間も一緒に生活をともにしていたのである。高尾からここ上野原の根本山に越してきた時、あまりの素晴らしい環境に「ここに犬がいたら完璧だな」とつぶやいていたNOBUYA。その一ヶ月後にDONが急に帰ってくることになり、その一年後にNOBUYAが急に旅立っていった。この一連の物語がやっぱり今でもとても不思議でならないのだ。でもDONのお陰で私はNOBUYAとの突然の別れも克服することができたし、心安らかに平和な環境の中で生きることができている。この3年間、DONというピュアで大きな存在から本当にとてつもない恩恵を受けてきた。

この春、手首の腱鞘炎が完治し1年振りに制作を再開することができたことが今の私にとって一番嬉しいことだ。3年前、北海道ツアーに出る直前に描き始めたこの絵を見て「おーっ!ついに描き出すかー。おめでとう。ツアーから帰ってきたら、たっぷりと絵に集中させてやるからなー!」と言って喜んでいたNOBUYAはそのまま帰って来なかった。それからの1年間は生活の急激な変化で描く時間がとれず、やっと落ち着いて描き出した頃に骨折、苦しかったリハビリが終わりまたやっと描き始めた途端、今度は腱鞘炎となぜだか3年間はストップがかかってしまっていた描きかけの絵。でもこれはきっとメッセージだったのだろう。NOBUYAが知る最後の作品を、このタイミングでやっと描き出すという意味があったのだと思う。3年の月日が経ってようやく今、待ちに待った再スタート地点に立てたことに心の底から「やったーっ!」と叫び出したいほどの喜びが沸き上がる。

与えられた幸せに感謝して、この豊かな自然の中で愛すべきDONとともに今日も私の宇宙をゆっくりと丁寧に紡いでいきたい。peace.