「花」

最近ドンとの朝の散歩中に2度、別々の日に別々の方からお花を贈られた。上野原の町のまったく違う地域でのことだった。

1人は60代、もう1人は80代といった感じの女性だった。朝の4時から5時に家の庭や畑でお花を摘んでいる彼女達を目にした時、どちらも「朝日に照らされながら花を摘む姿はなんて美しいんだろう!」と私は1人感動していた。そして無心に花を摘む彼女達を「まるで少女のように可愛らしいな」と思った。すると2人とも摘んだばかりの花を両腕に抱えてニコニコしながらこちらへずんずん向かって来たのだ。「これ、よかったら差し上げます。いつも大きなワンちゃんを連れて歩いている姿をお見かけしていました。毎日毎日どんな天気の日にも歩いていて、すごいなぁーと思いながら家の2階の窓から眺めていることもあります。そしてその姿を見て、よし今日も頑張るぞーっ!て元気をもらっているんです」「あなたと犬が散歩しているのをいつも見ているのよ。本当に毎日ご苦労様。あなた達はいつも笑っていてとても幸せそうよね。それが見てるだけで伝わってきてこっちまで幸せな気分になるのよ。この花をあげるわ。もちろん、花が好きな人にしかあげないわよ。あなたは大好きだってわかるもの….」その日は素敵なお2人からの温かい言葉と花という最高の贈り物に、胸がジーンと厚くなる感動的な朝から1日がスタートしたのだった。

というのも私は毎日花を見ながら歩いているのだ。散歩の時のリュックには常に花切りハサミが入っていて、山や森や町の空き地や道ばたに咲いている花を頂いてはNOBUYAの祭壇(笑)に添えることを日課としている。だからその日は本当に嬉しかったし、まるで神様からの贈り物のような気がした。私とドンが散歩で朝と夕方に歩く範囲は広く、日によっていろんなルートを通り、そしてどんどん新しい道も開拓しているのでそこには発見や驚き、感動や出会いが訪れる。ここ上野原は朝に散歩している方々が多く、特に最近は夫婦連れの方々の姿も目立つようになった。すれ違う時、私は必ず「おはようございます!」と声をかける。時にはそのまま無反応に通り過ぎて行く人もいるが、そんなことはまったく気にせず会うたび挨拶を続けている。そうすることが気持ちいいのだ。するといつのまにか無反応だった人が「おはようございます」と応えてくれるようになり、そのうち何も聞いていないのに向こうから家族のことや体の調子のこと、やがては自分の子供時代のことなどを話してくるようになることも多く、つくづく「人間って変わっていくもんだなぁ」という現実を日々体験させてもらっている。時には「わぁー今日は会えた!ツイてるわーっ!」と、はしゃいでくれるご老人の方々がいて、なんでもお友達の間では私とドンに会えた日にはいいことが起こる!という噂が広まっているというのだ(笑)。本当に可愛らしく素敵な人々のいる町なのである。そんなこの町を私はとても愛しているのだ。

この頃は見事に咲き誇ったバラの花が家々の庭を彩っていて、その側を歩くのが楽しみのひとつになっている。私とドンが暮らしているのは小さなお山の頂上なので、アトリエの窓をあけると下から香しいバラの香りが一斉に上がってきて、それはそれはもうたまらなく幸せな気分にさせてくれる。今いるこの場所が私にとってのとても大切な桃源郷だ。そう感じさせてくれるこの環境と家に感謝して今日も新しい1日を始めようと思う。

この世界に心から愛をこめて。