「結婚記念日」

36年前の3月15日は私とNOBUYAが付き合った日だった。

それは中学の卒業式でNOBUYAが式が終わったあとに告白してくれたのだ。イエスと言った私にすぐさま彼は「お願いがあるんだ。」と言った。それは一年後の約束だった。
「もし一年間無事に付き合っていて、この日を迎えることができたならこの場所で待っていて欲しい。この時間は卒業式をやっているから夜の6時に。」私はその約束にもイエスと答えた。そして高校の一年間は何事もなく過ぎていった。その間この約束のことにはお互い一切触れることはなかった。そしてちょうど一年が経った日、その約束を忘れる訳はなく私は半信半疑6時に中学校の校舎へと向かった。すると暗がりの中に人影があった。NOBUYAが待っていたのだ。そして「一年経ったね。」とプレゼントを渡された。包み紙を開いてみると、そこには大人の女性がつける口紅が入っていた。「その口紅をオレと結婚する時につけて欲しいんだ。」と彼は言った。高校一年の私に結婚という言葉はまったくピンとこなかったが「ありがとう。」と言ってタンス引き出しの奥に大切にしまっておくことにした。20才になって同棲するようになってからも、その口紅の存在を忘れることはなかった。そして29才の時、本当に結婚することになった。式にこだわっていなかった私達は、でもとりあえず地元で親戚だけでも集めて宴を開いて欲しいとの親の要望に応えてそうすることにした。そこで初めて私はその口紅をつけたのだ。隣に座ったNOBUYAは「あの時のつけてくれたんだね。」と覚えていた。もうとっくに消費期限は過ぎ去ってしまっていただろうが、口紅はその一回限りつけただけで今でもタンスの引き出しの奥にじっと存在している。籍を入れたのは6月13日だったがNOBUYAはずっと「オレにとっては3月15日が結婚記念日なんだ。」と言っていた。

そしてNOBUYAのいない2019年3月15日を迎えた日。久しぶりに36年前の光景を思い出していた。するとその夜、今年になって二度目となるNOBUYAの夢を見たのだ。またしてもリアル過ぎて忘れないようにと夢日記に書き記した(笑)。部屋の一室でまたもや高尾時代の仲間達と過ごしていると、突然NOBUYAがその空間に姿を現した。その現れ方は本当に何もないところに次第に彼の体が現れてきたという感じだ。私をはじめみんなも非常に驚いたが、でも会えて嬉しいという気持ちの方が勝りみんな喜んでいつものような色んなたわいもない話をして楽しく笑い合って時をすごした。それにしてもやはりどうやってここに来たのか?という想いが沸き起こり尋ねてみると「こうやってあばらの骨をちょっと裏返すんだ」と説明された。それは自分で発見したのかと聞くと、いやむこうで教わったんだと言う。それは簡単なのかと聞くと最初は結構難しかったとのこと。ま、方法はなんだっていいか、とにかくこうしてまた会えたことに私は興奮してしょうがなかった。だがそんなひと時にも終わりがきて、しばらくすると「もう帰らなきゃ。」と言うので私はNOBUYAと一緒に部屋の外に出た。2人きりになりたかったのだ。「愛してるよ。」と言うといつものように「知ってるよ。」と言う。「愛してる?」と聞くと「だーかーらー」という風にそんなこといちいち聞くなよという顔をされた。肉体がある時もNOBUYAは言葉じゃなくてこうして一緒に居ることが何よりもの答えだろ!と言っていた。それは分かっているんだけどね。最後にハグをするとそっとキスをしてくれた。とてもピュアな植物のような感触だった。そして今度は透明なエレベーターのようなものが現れてNOBUYAはそれに乗り私達は見つめ合った。空間が揺れるようなブレるような感じになり彼は元の場所へと消えていったのだった。いつもNOBUYAが夢に現れる時の爽やかな清々しさと温かさを残して….。

こうして節目節目にサインをくれることがNOBUYAからの言葉を越えたメッセージなのだなと改めて感じた夢だった。新橋の常設ギャラリー「nociw gallery」のclosing exhibition「ARPA-出発-」の準備をすでに整えてくれているような気がしてならない。本当にいつでも私の先を行くNOBUYAに心からの愛をこめて。

ありがとう。

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