希望

7月20日に我が家のオオカミ犬DONが突然倒れた。

その日の朝、いつものように街へ下りて散歩して、川の水で沐浴して元気に帰ってきて、喜んでご飯を食べた直後だった。立ち上がって歩こうとすると、すぐにパタリと倒れてしまい、いきなり歩行困難な状態になったのだ。いったい何が起きたのか?頭が真っ白になり、それからの数日はずっと夢の中にいるような時間が続いた。すぐにDONの兄弟のシヴァを今年の初めに見送った、故郷の北海道にいる妹のフミに連絡をした。実は彼女は6月の終わりに、久々に我が家へ旦那のヒロさんとともに車で遊びに来たばかりだった。別れ際に彼女は「DONちゃんにもしもの事があった時は、私来るからね」と言ってくれたのだが、まさかこんなにすぐにとは思いもよらなかった。しかもフミだけではなく、ヒロさんまでもが一緒だった。シヴァの最後の時に使った色々なものを積んで再び車で、連絡をしてからすぐに荷作りをして、その日の夕方のフェリーに乗り込み24時間で到着したのだった。

食欲もなく、水も飲まず、歩くことができない。そんな日々が続いたときはもう、このまま寝たきりになってしまうのかと愕然とした。だが、1日1日と経つにつれて、ゆっくりと回復に向かってくれたのだ。病院では最初に「この暑さが引き金になったんでしょうね。大型犬の14才というのは相当な高齢になりますから、もう介護生活に入る覚悟をした方がいいと思います。14才まで生きていること自体、非常に珍しいケースだと思った方がいいですね」と諭されたが、2回目に行った時には助手の先生に「歩いてる!」と真顔で驚かれ、受付のお姉さんからは「ドンちゃんすごい!再び奇跡が起こりましたね」と言われた。2019年に突然、あと24時間の命と宣告されてから大手術の後、奇跡の生還を果たしたのを病院の方々も鮮明に記憶していたのだ。

そう、私にとってはこれがDONの2度目の奇跡だ。いや、3度目の奇跡かもしれない。最初のオーナーの元から7年後に我が家へ帰ってきた時も、ギリギリ命をつないでいる状態だったのだ。彼の生命力の強さには感服する。今、目の前で笑い、食べ、歩いているドンの姿に胸をなで下ろす。本当に良かった。祈り、助けてくれた仲間達にも感謝しかない。そして、まだ食欲も戻らず、夜も眠れない状態で私も憔悴しきっていた時に、なんとジェーン・グドール博士からの直筆のお手紙が届いたのだ。先月お会いした時に私が贈った画集「RED DATA ANIMALS」のお礼の手紙だった。そこには「あなたのアートはとても美しい、本当に素晴らしい才能です。」と書かれていて、その言葉が嬉しくてたちまち私を元気にしてくれ、今の状況を支える大切なお守りとなった。ただ今回を機に、1日2回の散歩が1回になり、運動量がかなり減った。つまり、こうして徐々に人生を全うする時間に入ってきているということなのだろう。頭では分かっていたが、今回の一件がなければ、そこまで真剣には考えていなかった。ドンはそのことに気づくかせてくれるために、予行練習をしてくれたのかもしれないとさえ思うのである。本当にその時がきた時に、私が少しでもうろたえないようにと。それも彼の優しさかもしれない…。

だから今は、DONと過ごす貴重な時間を意識して存分に味わっていきたいと思う。愛してやまない彼は、私より遥かに先を行く先輩であり、人生の先生でもある。まだまだ学ぶことは沢山あるから、どうぞゆっくりと生き進んでいって欲しいと願う。そして同じ星に生きる者同士、一緒に地球を思いっきり楽しんでいきたい。

DON、心から愛しているよ。