ジェーン・グドール

7月4日に世界的な動物行動学者であり、環境保護活動家である「ジェーン・グドール」博士の講演会に参加した。
その頃、屋久島から親友夫婦が来て我が家へ滞在していて、その妻のNAOから「∀、すごいよ!ジェーンがなんと上野原の大学で講演をするらしいの」と聞いたのだ。 それは講演の1週間前で場所は我が家から見渡すことができる帝京科学大学だった。NAOはちょうどジェーンの新刊「希望の教室」を読んでいたらしく、その本にとても感銘を受け屋久島のガイド仲間にもプレゼントしたのだと言った。私がジェーンを知ったのは1997年、大好きな写真家、星野道夫の写真集でその完成を見ることなく彼が旅立った「GOMBE」の中でだった。アラスカの自然を撮っていた道夫がはじめてアフリカへ渡り、ゴンベの森と野生のチンパンジーを研究するジェーンをその写真に収めていた。私はその中の一枚の写真のジェーンの目に魅了され、当時暮らしていた家のリビングにそのページを見開きにしてずっと飾っていたのである。「なんて美しい人なんだろう….」と思いその後、彼女の書籍を読んでますます共感を覚え尊敬していた。
NAOはこのタイミングが凄過ぎるので、何とか講演会に参加できないものかと言った。しかし、主に大学関係者と学生へ向けてのもので一般の参加は難しいようだった。 そこで私が思いついたのは、昨年帝京科学大学を卒業して、たまにドンの散歩をしてくれている友達のことだった。早速彼女に聞いてみると、彼女もオンラインでの参加とのこと。でも今も先生とは交流があるので聞いてみますと言ってくれた。が、やはり「今回は沢山の一般の方から問い合わせがあったようですけど、みんなお断りしているとのことでした」との返事。それでNAOは直接大学側に自分は屋久島でクジラ・イルカ研究所を立ち上げて活動している者ですということを記しお願いのメールをしたが、丁寧にお断りされたのだった。「まぁ仕方ないよね、私達もオンラインで参加しよう」と諦めたのである。
ところがその頃、北海道から妹夫婦も遊びに来ていたので、みんなで友人がオープンしたばかりのお店へランチを食べに行った。食べ終わって席を立ち帰ろうとしたら、たまたま来ていた久しぶりに再会するカメラマンの友人に声をかけられたのだ。そして彼が唐突に発した言葉に驚いた。「∀はジェーン・グドールって知ってる?」「ええっ!知ってるよ。来週来るんだよね」「オレ、撮影を手伝ってくれないか頼まれたんだ」「えええっ!」彼に手伝いを頼んだ友人というのもまた私の知人だった。「あのさ、彼に私達もアシスタントとして入れないか聞いてみてくれないかな?」とっさに、そんな言葉が口をついて出てしまった(笑)「わかった。聞いてみるよ」そして妹夫婦が先に帰り、親友夫婦と DONと毎回恒例の小富士へ行った時に「オッケーだってさ」と電話がきたのである。「うわぁーっ。やったぁーっ!」私達はこの計らいに大喜びしたのだった。
当日スタッフとして入れて貰えたおかげで、始まる前にジェーンとお会いできる機会に恵まれた。私はRED DATA ANIMALSの画集をもし渡せたらと持参していたので、ジェーンに 直接渡すこともできた。まるで夢のようだった。あとからカメラマンの友人が「∀達が去った後も、∀の本をジェーンはゆっくり最後まで眺めていたよ。関係者が話しかけてきても、それに応えながらページをめくっていたよ」と聞かされ、心の底から嬉しかった。講演の内容も真剣に聞けば聞くほど魂が覚醒していき、招待された高校生や大学生との質疑応答も大変興味深かった。地球におけるすべての命に対して命をかけて生きているジェーンの姿に深く感銘を受け、私も自分にできることで、地球のために役立っていきたいと強く心に誓った時間だった。
そして講演も終了し記念撮影となった時、端っこにいた私達になぜか大学の先生達が「ほらほら、君たちもっと中央へ寄って」と言ってくださり、促されるままに進んでいくと あれよあれよという間にジェーンの隣にきてしまい、ジェーンが抱いている、世界中の旅にいつもお供しているお猿のぬいぐるみ「ミスターH」に挨拶し、頭をなでなですることもできてしまったのだ。このミスターHに触ると幸運が訪れると言われていて、世界中の子供達がみんな触りたがる憧れの的に…..。隣に立っているジェーンはまるで自然そのものといったエネルギーで、人がいるという感覚ではなかったのがとても不思議だった。尊敬する世界の宝のような人に直接触れるという貴重な体験を与えてくれたすべての存在に、心から感謝した最高に幸せなひとときだった。DONにもぜひ会って貰いたかったなぁ……。