「NOBUYA」

2017年8月27日1時38分。最愛のパートナーである「NOBUYA」が旅立ちました。

初めての札幌のギャラリー「鴨々堂」での個展の最中のことです。26日はARTGYPSY ARTSHOWが昼の部、夜の部と2回あり、ともに大盛況でNOBUYAも大満足していました。
札幌滞在中は友人宅にお世話になっていて、その友人家族は一家で新潟に旅行に出かけていました。帰りの車の中で「今日のアートショーは最高だった。特に2部の方が良かったよ」と言ってくれました。「家に帰る前に銭湯に入っていこう」というので「えーっ。着替えもタオルも持ってないよー」と話すと「いいじゃん30分だけ」というので「笑福の湯」という銭湯に入ることにしました。「見て。縁起がいい名前だね」という私にそっと自分のタオルを手渡してくれたNOBUYA。30分後NOBUYAは先に上がっていて「気持ちよかったねー」と話しながら友人宅に着きました。リビングに行き2人でARTSHOWの余音を感じていると突然NOBUYAが「痛いっ!」と頭を押さえ悶え始めたので慌てて救急車を呼び病院に駆けつけて2時間後のことでした。

その3日前の夕食後に「なんか頭が痛いんだ」と話していたNOBUYA。「ギャラリーは午後からだから明日の午前中病院へ行ってくれば?」と言ったけれど「いや。明日は大事なARTSHOWだから行ってる時間なんてないよ。終わったら行くから」と薬局で頭痛薬を買って飲んで準備に取り掛かっていました。今回のARTSHOWのゲストアーティストはオーガナイズも手掛けてくれた「みうらあつこ」のユニット「アカプルエ」で彼女たちがインスピレーションで手作りした楽器で初めて人前で演奏するというデビューのライブでもありました。リハーサルの時、彼にしては珍しいくらい厳しい口調で真剣にアドバイスをしていて「なんかいつものNOBUYAと違うな。怖いくらい…」と感じていました。するといざ本番になってみるとリハの時とは比べ物にならないくらい彼女たちの音が冴え渡っていたのです。これには私も驚いたけれどNOBUYAが一番感動していました。そして彼女たちにそのことを心を込めて伝えていたようなのです。

だから翌日にNOBUYAが旅立ったという知らせを受けて驚いてアカプルエのあつこと「かずみ」さんが飛んできました。「信じられない。昨日あんなに笑っていたNOBUYAさんが。そういえば昨日ギャラリーの外で苦しそうな顔をしながら深く何度も深呼吸をしているのを見たの。でも中に入ったらニコニコ笑って楽しそうにしていて」とあつこ。「そうだったんだ…」きっと頭痛薬も効かないくらい相当痛かったのをこらえてARTSHOWを成功させるために全力で頑張ってくれていたのでした。特に私にはそんな顔を一切見せずにARTSHOWに集中できるようにしてくれていたのです。すると驚いたことに隣にいたかずみさんが「実は私NOBUYAさんの姿が見えて声が聞こえるんですけど言ってることを話していいですか?」と言ってきたのです。実は私も個展最終日のこの日1日ずーっと彼の存在がここにあることを感じていました。「はい。ぜひ聞きたいです」

「∀KIKO突然逝ってごめん。自分でも今回のことでまさか死ぬとは思ってなかったから正直びっくりしたんだ。でも何も後悔はしていないよ。なぜならこういうパターンでお前より先に逝くことは実は生まれる前に決めてきたことなんだ。今まで肉体を持ってお前のこと支えてきたけれど、これからはより自由になって今まで以上にお前をサポートしていくから何も心配することはない。安心してお前はお前の一番やりたいことに今まで通り専念するだけでいいから。俺はずっとそばにいるよ。そのことをお前が一番感じていくはずさ。∀KIKO愛してるよ…」私が思わず自分の腕を交差すると「わかりますか?今NOBUYAさんがハグしているのが」とかずみさん。そう個展最終日のギャラリーにはNOBUYAのエネルギーが満ちているのが入った途端伝わってきました。24時間前にはここで一生懸命にARTSHOWのセッティングをしていたNOBUYA。とても不思議な感覚でした。

2日後のお通夜の朝、我が家のオオカミ犬ドンと散歩していると空に大きな鷹がやってきました。そして私達を先導するように前方をゆっくりと舞い始めました。するとその鷹が空から大きくて美しい羽を落としてきたのです。聞くとその羽は「風切り羽」といって一度抜けるともう二度と生えてこない羽だということでした。ともに余市で生まれ育ち幼稚園の時からクラスが一緒で中学の卒業式にNOBUYAに告白されてから35年間ずーっと一緒に生きてきました。普通に見たら早すぎる死になるかもしれないけれど私達にとってはとても濃密な時間をともに過ごすことができて今豊かな気持ちでいっぱいです。

3年前にNOBUYAが掲げた私達ARTGYPSYのテーマ「SUPER PEACE」「∀KIKOこれからの3年間はどうしてもこのSUPER PEACEというテーマで全国を旅して行きたいんだ。この3部作が終了したらあとは∀KIKOがまた自由に決めていけばいいからこれだけはやらせてくれ」と言っていたNOBUYA。第1章は-FANTASY-昨年第2章は-MEMORY-そして最終章である今年は-REAL-。「REALとはこのことだったのか!」とまさに今、超現実を噛み締めている私です。以前からNOBUYAは「俺は今本当に幸せだからいつ死んでも悔いはない。そして逝く時はうちの爺ちゃんみたいにポックリ逝きたい」と話していました。それを有言実行した彼は本当に天晴れな男だと思います。さすがです!先見の明を持ったNOBUYAの視野は広く世界を見渡していました。まさに鳥のような人でした。

全国各地から友人達が駆けつけてくれた葬儀も無事終わり、今朝ドンと再び余市川を散歩していると突然霧雨が降りだし、大きな虹が空いっぱいに架かりました。「だから大丈夫だって言ってるだろ!2人のこと見守ってるよ」そんな声が聞こえてきました。9月6日からはNOBUYAも今回のツアーで一番楽しみにしていた初めての余市個展が始まります。
ARTGYPSY ARTSHOWとともに私はNOBUYAに捧げます。一緒に楽しもうね。愛しているよ心の底から。

そしてこれからもどうぞよろしく。