「I LOVE DON」

我が家のオオカミ犬DONがめでたく12才を迎えた。一巡りである。

12年前、私とNOBUYAは高尾に暮らしていた。DONの母親のnociwとともに。ちょうど月に一度、高幡不動尊で開催される「ござれ市」の出店を終えた翌日の明け方、
nociwが急に遠吠えのような声を張り上げて産気づきNOBUYAと慌てて飛び起きた。そこから3時間ほどかけて6匹の子供達が生まれてきたのだった。一匹づつ袋のようなものに包まれながら出てきて、やがてその袋が弾けて破れ羊水にまみれて濡れた赤ん坊が現れた。DONが果たして何番目だったのかは覚えていないが6匹の中でもとりわけ体は小さかった。家に侵入者とおぼしき人間がやってくると真っ先に吠えたてるのだが、そのくせすぐに兄弟の後ろに回り姿を隠すようなお調子者でもあった(笑)。懐かしいな。

6匹はたちまち「欲しい!」という人達に貰い先が決まった。どこにどの子がいくのかは私達が決め、赤ん坊の写真をメールして飼い主に先に名前を決めてもらい引き渡すまでの間に慣れるようにとその名で呼んだ。それぞれの飼い主が決めた名前は「ブッダ」「シバァ」「カーリー」「ニマ」「ラマ」そして「ドン」。みな各自それぞれに付けた名前なのに神様みたいな名が共通していて驚いた。「DONだけがなんか異色だよねぇ」とNOBUYAと笑った。その名を考えたのはDONが貰われていく先の家の子供達で最初は「どんこ」だったらしい(笑)が、「いやそれはちょっと」と両親が却下し「ドン」になったとのことだった。

貰われていく先での飼い方も他の5匹は家飼いとのことだったがDONは外飼いとのことだったので、生まれてからしばらくの間は6匹一緒に我が家の中にいたが、もの心つくようになってからはNOBUYAが「貰われていくまで家の中にいたのに、行った先でいきなり外になる方がかわいそうだ」と言って、向こうにいっても馴染めるように、今から外に慣れさせようとDONだけが外の生活になった。確かにNOBUYAの言う通りで、行ってからいきなり外の方が酷だろうとは思ったが最初はもちろん「なんで僕だけ外なの?」と鳴いているし、胸がしめつけられるように辛かったのを覚えている。NOBUYAもそうだったろうと思う。でもそれが彼の優しさでもあった。

毎日毎日鳴いていたDONだったが、ある日から急にピタリと鳴かなくなった。それがあまりに突然のことで驚いたが彼なりにこの状況を理解して諦めてくれたのか、逆にそのいじらしさに私達の方が泣いたのだった。「ごめんよDON。でも今慣れておかないと後での方がもっと悲しくなるから…」そうして兄弟達が2、3ヶ月のうちに次々と旅立っていったがDONは先方の事情で7ヶ月も我が家にいたので家飼いのnociwと外飼いのDONと、それまでの間は4人家族でできるだけ外で一緒に楽しめるようにしょっちゅうキャンプに出かけた。そしてとうとうDONの飼い主がやってきて貰われていく日になった。車に乗ったDONの姿を見たとたん、笑顔で送り出すつもりが自分でも以外なほど涙がとめどもなく溢れ「ど、どうかDONをよろしくお願いします!」と泣きながら見送ったのだった….。

が、まさか7年後に私達のもとに帰ってくることになるとは夢にも思わなかった。あの3年後にはnociwが7才でガンで逝ってしまい、特にNOBUYAはすっかり意気消沈していたので我が家に再びnociwの血を引くDONがやってきたことに不思議な巡り合わせを感じずにはいられなかった。NOBUYAの「7年も外にいて今さら家の中には入らないだろう」という予想はみごとに外れ、すんなり家の敷居をまたぎ今では寝室でグーグー寝ているDON(笑)。昨年の命の危機にさらされた大手術と入院を経て奇跡の生還を果たし、周りからは「何だか手術前よりも体つきががっしりしてとても元気そう!」と言われる今日この頃。いやはやDONの生命力と精神力にははなはだ敬服させられる。とにかく、そんなDONへの愛は日に日に増すばかりで毎日がたまらなく幸せだ。

しかし、この時間は永遠ではないと身を持って教えてくれたNOBUYA。だからこそ、今この一瞬を大切に生きていきたいと思う。DON愛してるよ!