「風」

NOBUYAの旅立ち以来、写真の整理を少しづつ始めていた。

35年分の量はかなりのもので、でもこれをいつまでもとっておいてもいつか私が死んだ時には誰かが捨てなければならなくなるので今のうちから処分していこうと思いたったのだ。とはいってもゴミ箱に捨てる気分にはなれず中庭で焚き火をしながらお焚きあげをしているのだが、一枚一枚見ているとその時の情景が一気に蘇ってきて懐かしくなりついつい時間が経ってしまうのだった。デジカメがなかった十代の頃には写真を撮る度にいちいち現像していたのでその量は増えるばかりだった。二十代、三十代とだんだん自分達で写真を撮るという行為自体に興味が薄れていき、誰かが撮ってくれた写真を頂くというスタイルに変わっていった。でも今見返してみると、過去の色んな出来事に対してクリーニングをする機会が与えられているのだなぁと感じる。自分でもすっかり忘れていた様々な感情がふつふつと湧いてくる。まるでNOBUYAと一緒にクリーニングをしているようだ。だいぶお焚きあげも進んだ気がするのだが、それでもまだまだ「こんなにあったのか」と思ってしまう写真の中の記憶たち。根気よく、ゆっくりと丁寧に自分をみつめながら火の中へとくべていくことにしよう。季節もあたたかくなってきたことだし、星空を見上げながらこの時間を楽しもうと思う。

国分寺で開催の個展のタイトルは「PLANTS WIND」だが、ネイティブインディアンのメディスンホイールの中で私は風のファミリーに属するということを二十代の頃に本で知りその時以来、私は風をいつも意識してきた感があるのだ。その中ではNOBUYAは火のファミリーなので彼はいつも「オマエの風が強過ぎるとオレは燃え過ぎてしまうんだからちょうどいい風を吹かせてくれよ」と言っていたものである。その塩梅が結構難しくてNOBUYAはいつも火がついて燃え上がってしまうのだったが。(笑)

風の時代に入ったといわれているが、確かに風の表情が今までとはずいぶん違っている気がするのだ。DONとの散歩の時にもそれは感じるのだが、ここは山なので風がいつも辺りを吹き抜けていく。それで色んな詩が聴こえてきたりする。その感じが今までよりも更に精妙になったというか、豊かになっているように感じるのである。うまく言えないのだが…..。そんなわけで植物店で開催される個展だったので「植物の風」と、ふと浮かんできたのだった。

風のように訪れた人々のインスピレーションが行き交う、そんな空間になればいいなと思っています。

風のようにふらりと覗いてみてください。