「家族」

伊豆河津町「やまびこ」に招かれて開催した個展「夏至の宴」がおかげさまで無事終了した。

初日の2日間は雨模様だったが、それにもかかわらず沢山の方々にお越しいただき、本当にありがたかった。初日のアートショーも降りしきる雨の中、泥まみれになってやり切った(笑)。今までも野外でやったことは何度かあったが雨の中やるのは初めての経験。やまびこオーナーの立川(和人・沙樹子)夫妻が「ま、どんな天気でも楽しんでいきましょう!」と満面の笑顔で挨拶してきて「うん。そうしよう!」と笑顔で応えた。実際、雨に降られているというよりも雨という地球からのシャワーをあびて水たちに包まれているような感覚になった。この土地に400年以上も前から立つご神木「ぼく様」の傍らで自然たちに見守られ不思議な安堵感の中でやることができた。この日のために主催者であるもうひと組の夫婦、後藤(やす・とよ)夫妻は自分たちもアートショーでゲストミュージシャンとして参加するために色々と真剣に準備をしてくれていた。2人の他にも仲間たちを誘って音のバリエーションを広げてくれたりもしていた。やすが「今回叩いてみようと思って竹を切り出したんだけど、竹の中に小さな虫がいたからその虫にも音を奏でてもらおうと思って。いのちだからね」と言っていたが、今回のアートショーのタイトルがまさに「SIKNU(アイヌ語でいのち)」だったので水の恵みの中、人も自然も一緒にコラボしているようで本当に気持ち良かった。

2日目のマルシェの日は「えっ。こんな山奥に?」と信じられないくらいの人々が駆けつけていたが「これもひとえにやまびこの2人の人望ゆえなのだなぁ」と私は静かに感動していた。
沙樹子が町の広報に載ったことも大きかったようだ。町の中で置かせてもらっていたフライヤーが全部なくなったという場所もあったという。「この日を楽しみにしていました!」という町の方々からの声を聞いて胸が熱くなった。杖をついて来てくださったお爺さんやお婆さん、お父さんお母さんと絵をじーっと食い入るように眺めている子供たち。人口7千人の町の人々の笑顔と温かさに触れた。
近隣に住む主催者の友人達がスタッフとして一生懸命に働いていた姿にも心打たれた。そして、はるばる伊豆まで私が暮らす上野原や隣の藤野などから見覚えのある顔が続々と現れたのも嬉しかった。今回の夏至の宴では人と人、人と自然の結びつきの強さを改めて学ばせてもらった気がする。

そして最終日の夏至当日にはみごとに空が晴れ、お日様が初めて顔を出した。これがまた感動ひとしおだった。それまで雨だった分、太陽のありがたさをしみじみ感じることができたから。その場に居合わせたみんなで夏至の太陽が沈みゆくのをじっと見守った。雲が虹色に輝き色んな形に変化していった。「おおおっ!」と歓声があがる。「みんなでこんなにも満ち足りた気持ちで、ただ空を見上げるってなんて素敵なんだろう……」と私は幸せに浸っていた。やっぱりすべては完璧なタイミングでおこっているのだ。

我が家のオオカミ犬DONもかれこれ一週間ほどの滞在で、すっかりやまびこに溶け込んでいた。よっぽど居心地がよかったんだろう。みんながDONを可愛がってくれ撫でてくれたから。子供も大人も。最初は「犬は土間で寝てもらうことになります」と言ってたやまびこの2人だったが、最後には和人が「あの、DONのリード外しちゃいました」と言ってきて、見るとあっちの部屋からこっちの部屋へと自由に居場所を変え最も落ち着く所でグーグー寝ているという始末。沙樹子も「DONはもう家族だから」と。甘えん坊将軍してやったりであった!(笑)そうして別れの時がきて、お互い胸が一杯で言葉にならなかった最後の日。またここにも大切な家族がひとつ増えたのだった。まるでNOBUYAと「ARTGYPSY TOUR」と称して全国を駆け巡っていた頃の、あの懐かしい感覚が蘇ってきた深く思い出に残る2021年の夏至だった。

今年はこんな風に、思わぬところから声をかけていただいて表現する場を与えてもらっていることが本当にありがたい。私のギャラリー「nociw」がある根本山での月1開催のイベント「pon karip」もしかりだ。主催の「みつばち農場」を営むオーガニック農業家「吉野艶子」の企画で彼女が教えるナーラーヨガの最後に私がインディアンフルートを吹いて、みんなで持ち寄りランチをしてギャラリーを見学して解散という、いたってシンプルなものなのだがpon karipの名前の由来のように小さな輪が少しづつ広がってきているのが感じられる。艶子の希望で8月は宿泊込みでキャンプ場での開催となった。夜は星空をバックにアートショーがあり、ミュージシャンの生音を聴きながらみんなで焚き火を囲むという….。まだまだ夏の宴は続きそうだ。

素敵な日々を!愛をこめて。