「京都のおじちゃんへ」

先日叔父が旅立った。

その叔父は母の末の弟で北海道余市育ちだが、高校の修学旅行で行った京都が気に入り大学を京都に選んだのだった。その大学時代に種子島から出て京都で働いていた叔母と出会い恋に落ちた。
私はその頃ちょうど病気で子供病院に入院中で、そこに初々しい二人がお見舞いに来てくれたのを今でもはっきりと思い出せる。その時、結婚の報告に来ていたようでその後、北海道の親戚はみな京都での結婚式に呼ばれて行った。私は病院の中で、初めて飛行機に乗って京都という遠いところへ行ける妹のことが羨ましいなと思ったのを覚えている。叔母は繊細で可愛らしい人で親戚の中で一番私の絵を理解してくれる人でもあった。そんな叔母が昨年の二月に急死した。朝起きて横を見たら息が止まっていたそうで叔父は驚いたという。そして今年その一周忌の法要のために北海道から来た親戚と京都の宿で落ち合っていると、叔父から電話があり急に病院に入院したとのこと。法事を翌日に控えてどうなることかと思ったが無事済ませ一同病院へ向かった。通された個室で見た叔父は一年前に会った叔父とはまるで別人になっていて一瞬言葉を失った。「早くよくなりますように」と思わず手を握ったのが最後となった。それから一ヶ月ちょっとであっという間に旅立ってしまったのだ。叔父には昨年京都に帰ってきた娘の「真理子」と孫の「みなみ」がいた。お通夜の日、駆けつけると喪主の席で涙ぐむ真理子がいた。その日は親族だけで会場に泊まることになったが、いくら待っても真理子が寝室に来ない。叔父の眠るホールへ行ってみると1人真理子が椅子に座っていた。従姉同士でも離れているので、こんなに話したことはないというくらい色々話をした。聞くと叔父は三年前からガンの宣告を受けていたのだが叔母にも誰にも言わず、昨年叔母が亡くなって真理子が帰って来た時に初めて真理子に告げたのだという。しかも「あとは誰にも言うな」と口止めをされて。「結局、それが父だったんですね…」とぽつりと真理子。「お酒が好きで好きでそれで体を壊したかもしれないけど、それは止められない。というか止めたくなかったんだね。人に言ったら真っ先に「酒やめろ!」って言われちゃうもの。おじちゃんパンクだよねー(笑)」「最後には安心させるためかもしれないけど「好きなことしてきたから満足してる」って言ってました」「そっか…よかったね」医者から余命一週間と言われたと自分で母に電話してきたという叔父。最後は母も叔父の手を握りながらずっと言葉をかけ続けることができたという。

告別式の2日後、私は座間味に鯨を見に行くことになっていた。母から知らせを受けた時はまだ葬儀の日程が決まらず、もしかしたら座間味行きは見送りになるかもしれないと思った。一緒に行くことになっていた「奈央」に伝えたら「大丈夫。祈ってるよ。おじちゃんも絶対∀に行ってほしい筈だから」と言ってくれていたが、本当にギリギリ間に合う完璧なスケジュールとなったのだった。実は叔父の知らせを受ける日の朝、毎日の日課でドンと散歩に出かけたのだが、山を下る時に目の前の道に大きな鳶が舞い降りてきてとまったのだ。そして帰りに山を登っていると別の場所で今度は道にとまっていた鳶が大きな羽根を広げて目の前から飛び立っていった。その光景自体が初めてだったのと何かのサインのような気がして帰ってさっそく奈央にメールした。「それはきっと何かが起こるサインだよ∀ー!」って。そうしたらその数時間後に母からの電話で叔父のことを知ったのだ。まるであの二羽の鳶はおばちゃんとおじちゃんで、やっと二人で手を取り合って旅立っていったんじゃないかという気がした。無事沖縄へ着くと、ふととある人からメッセージがあると言われた。「あなたの亡くなったおじさんがついてきてるよ。あなたのお母さんに伝えてほしいそうだよ」「最後まで一緒にいてくれてありがとう。葬儀の時、何度も姉さんの側で言ってたのに全然気づいてくれないんだもの」って「あなたのおじさんって、とっても面白い人よねー」。母にさっそく電話すると。「あーいい話が聞けてよかった。お母さん鈍感だからね。ははは。」と受話器の向こうでとても喜んでいるのがわかる。棺に蓋をする際に叔父の顔に白い欄の花を添えながら「ほんとにバカだよーあんたはっ」と何度も何度も繰り返し泣きながら弟をしかっていた母の顔が蘇った。

座間味では鯨の家族がボートと一緒に泳いでくれた。どう見てもじゃれて遊んでいる様子。言葉にできないほどの感動だった。お腹を出して甘える子供は我が家のドンちゃんそっくりだ。マイクから伝わる鯨の歌がどこか懐かしいような安心感があって、遠い星の記憶を呼び覚ましてくれるようだった。おじちゃんもきっと聞いていただろう。昨年京都個展に来てくれたおじちゃん、私達ARTGYPSYの生活を知って「まぁー大変やろうけど、自由でええなぁー」って言ってたっけ。キャンプや釣りやドライブが大好きだったんだよね。おじちゃん、色んな気づきをありがとう。大好きだよ。ARTGYPSY TOUR一緒に旅しよう!

愛をこめて。