「ござれ市」へ想いを寄せて

「ござれ市」へ想いを寄せて

20年間続けてきた国宝高幡不動尊でのござれ市も、いよいよ新年のラスト一回を残すのみとなった。

11月にふと「ござれも20年間やってきたし、そろそろこの辺で卒業しようかな」と思ってから、どの月に締めくくろうかと考えた時、やはり一年で一番盛り上がる1月がいいだろうと思った。お客様の笑顔が境内にあふれ、力強いエネルギーが渦巻く月だ。今目を閉じてちょっと振り返ってみるだけでも色んなシーンが次々に浮かんでくる20年の月日。1999年に初めてこの骨董市という世界を垣間みる機会を突然与えられてから、人生において沢山の学びを頂いて本当に貴重な体験をさせて貰った。ここに来なければ妖怪のような業者のオヤジ達の優しいピュアな温かさに触れることもなかっただろう。そして人間を勉強させてもらった。美しさを知る目を。初めて参加した日、そのあまりにもディープな世界に怖がっていた私に「続けてみろ。絶対お前のためになるから!」と愛をこめて叱ってくれた「NOBUYA」。そもそも20才の時、同棲するために高幡不動に家を探してきたのは彼だったのだ。「実は彼の見えざる導きはその頃からずっと続いていたのかも。….」とさえ思えてしまう。そこから毎回、お昼には自転車に乗って心のこもった「愛夫弁当」を届けてくれた。業者のオヤジ達にいつも冷やかされて照れくさかったけど、本当にありがとう….。

なぜだかもの凄く懐いてくれた業者の娘達。小学、中学、高校と年を重ねていくうちにどんどん大人になって通り過ぎて行った仲間。あの無邪気で美しい時間も楽しかったな。NOBUYAが予言した通りござれ市でのご縁がつながって様々な嬉しい現象が起こっていった。5年経っても10年経っても再び来てくださるお客様がいて、そのたびに沢山の感動を頂いて….。
高幡不動、不動明王、大日如来、空海、真言密教とのご縁。向こうからやってくる明確なシンボル。それらからのメッセージに敬意を払いつつ、でもどこか彼らに対して親しみやすさが増していく。お線香の香りとともに護摩炊きの読経と太鼓の音にのせて境内を流れる、見えるものも見えないものも一つになった大きな大きな川。「自分は今いったいどうしてここにいるのだろう?」と何度も思った瞬間があった。

毎回必ずやってきたのは出店の準備ができたら、まずは境内すべての拝み所に行き祈るということ。「良き日でありますように!」歩いていると、どんどん体に元気がみなぎってきて「よーし今日も楽しもう~!」となるのだった。「ござれ市」のことを大切に大切にしていた自分がいたから今まで続けてこれたのだが「大切だからこそ手放してみよう!」とやっと思えるようになった自分の心境の変化に「おーっ。いよいよ卒業ですかぁ~!」と拍手しているもう1人の自分がいて、これからの新たな門出に瞳を輝かせている。すべては自然の流れなのだ。「ござれを卒業します」とボスに告げた途端、新年の展示会のオファーがやってきた。青山で創業30年を迎える書店「ブッククラブ回」にて新作詩画集「∀KIKO pictures and poems」の出版記念個展が1月の新月から2月の新月まで一ヶ月間開催されることになったのである。オープニングとクロージングには「ARTGYPSY ARTSHOW」を行うことになり、詩画集の構成までで映像には残さず旅立ったNOBUYAに代わって回のスタッフの方々が映像を創ってくださることになり、初めて詩画集のポエトリーリーディングと出会うことになった。NOBUYAのあの、ガハハ笑いが脳裏に浮かぶ。ヤツはいったい何を企んでいるのだろうか?(笑)「とにかく楽しんでいこうぜ!こっちも、そっちもな!」そんな言葉が聞こえてくる今日この頃です。みなさまとのご縁に感謝して。

2019年も本当にありがとうございました。

☆ブッククラブ回での個展詳細はこちら。ご来場をお待ちしております!
https://www.bookclubkai.jp/event02/