2024年最後となった屋久島個展が、おかげさまで無事終了した。
今は屋久島の友達の家を借りて、一人暮らしをしながら絵を描いている。屋久島に来てひと月が経とうとしているが、気がつけばあっという間に時が過ぎていった。今年の春に7年ぶりにこの島を訪れることができた時、7年前にNOBUYAとDONと三人でARTGYPSY TOURとして最後に個展やアートショーをやった時のことが鮮明に思い出された。そしてNOBUYAとDONが旅立った後の今回の個展では、2人の姿こそないが、ずっと彼らを感じ続ける日々だった。屋久島に入った日から、NOBUYAは4日間連続で夢に現れた。こんなことは初めてだ。NOBUYAが現れない時はDONが登場し、何度も夢に現れるといった具合だ。親友のNAO曰く「∀がとてもリラックスしているから、きっと繋がりやすい状態になっているんだよ」とのこと。屋久島での個展が7年ぶりということもあって、緊張感もあったが、2人が側にいると感じられてとても安心した。しかも親友のNAOやKENTA、後援をしてくれた屋久島クジラ・イルカ研究所の仲間たちが惜しみなく協力してくれたお陰で、2つの会場での開催が本当にスムーズに流れていったのだった。
お客様もはるばる、東京や横浜、静岡、山梨などから駆けつけて来てくだり大変ありがたかった。そして大勢の屋久島在住の方々が足を運んでくださったことが、本当に嬉しかった。その中には7年前の個展に来てくださっていた方々も多く、みんなが「おかえりなさい!」と声をかけてくれて感動した。「またここに帰ってこれてよかった」心からそう思った。本当に第二の故郷のような気持ちになるのだ。それはやっぱり、気を許せる仲間たちがここで暮らしを営んでいるということもあるし、大好きな自然の懐に抱かれている感覚を常に感じることができるからなのかもしれない。
今回、この時期に個展を開催したのは屋久島にクジラが帰ってくるからでもあった。7年の歳月をかけて完成した、私の新作のFLAGはクジラを描いたものだったし、この7年の間にNAOは友人のKAYOと研究所を設立し、毎年クジラの調査に明け暮れていた。春にカムチャッカへ移動したクジラたちが戻ってくる12月に開催するのがベストなタイミングだったのだ。一つ目の会場の屋久島新庁舎での開催中は、まだ目撃されていなかった。しかし、二つ目の会場のTIDA resort yakushimaでの開催直前に、見事現れてくれたのだった。またもや夢を見たのだ。海からクジラたちがこちらに向かってやって来て、沢山撫でさせてくれるという夢を。その感覚はDONをいつも撫で回していた時のそれと全く一緒だった(笑)。しかも、ものすごくリアルな感触。NAOに話すと「それは絶対サインだね。ご褒美が待ってるわー」と。そして実際にNAO、KENTA、KAYOと今回初のクジラに出会うことができた。しかも4頭のクジラが何度も何度もジャンプして、長い間近くにいてくれたのだ。「いきなり、こんな事はなかなかないよ、∀は超ラッキーよ!」とNAOが言った。「あとは、TIDAでの開催中に見れたら最高!」と思った。TIDAの大きな窓は海に面していて、バルコニーから大海原が見渡せるロケーションなのだ。それを想定しての会場でもあったのである。そしてそして、最終日のアートショーの始まる前に、何と彼らは姿を見せてくれたのだった。このためにTIDAのオーナーは、お客様用の双眼鏡を用意して下さっていたのである。お客様がざわめき、みな双眼鏡を手にバルコニーへ繰り出した。「あぁやっぱり、想像通りの展開だぁ~」と事のなりゆきに感謝せずにはいられなかった。
そうして夜も更け、アートショーに向けてお客様が続々と来場された。この日は満月。NAOが朝から「∀、もしかしたらナイトレインボーが見れちゃうかもよ。満月の時に、絶妙なタイミングで現れる時があるのよ」と言っていた。「へぇーっ。その虹をみんなで見れたらなんて素敵だろう!」とふと思った。そんな夜の虹のことを、私は今まで知らずに生きてきたのだ…。すると、アートショーが終わった直後に「あ、虹だ!」と誰かが叫んだ。みんな一斉に外へ出た。そこには何と本当に満月に照らされた夜の虹がかかっているではないか。それもダブルで。「うわぁーこれだ。なんて美しいんだろう!」感動のあまり、ただただ呆然とその場に立ち尽くした。隣にいた友人のHIROMIが「俺、屋久島に住んでるけど見たのは12年ぶりだよ…」とつぶやいた。本当にすべてのタイミングが奇跡のようだった。あの虹を見て、みなそれぞれに想うことがあっただろうが、私にはやっぱり、NOBUYAが旅立った4時間後にDONと朝の散歩をしていて、目の前に突然現れたダブルレインボーを思い出させ、その時とまったく同じ感覚になっていた。ネイティブの諺では「ナイトレインボーを見た者は一生幸せになる」とか、「これからの人生に大きな転機が訪れるサインである」ともいわれているらしい。私にとってはあの虹をあの場にいたみんなと一緒に見れたことが、自然からの大きな大きな贈り物だった。心の目にしっかりと焼き付いたので、もう、いつでも思い出すことができる。最高のご褒美を本当にどうもありがとう。
2025年も、どうぞよろしくお願いします。