ジェーン・グドール

10月1日、世界的なチンパンジー研究の第一人者であり、自然保護活動家の「ジェーン・グドール」博士が享年91才で旅立ったと知り黙祷を捧げた。

私が地球上で最も尊敬する偉人の1人であり、大のファンだった。彼女を初めて知ったのは大好きな写真家「星野道夫」の写真集「GOMBE」からで、彼が初めてアフリカを訪れて、ジェーンとともに彼女の原点となったゴンベの森で一緒に過ごした時に撮影された写真が収められていた。その写真集自体が星野道夫がヒグマに襲われて亡くなったあとに出されたもので、なんともいえない思いでページをめくった時に現れたジェーンの佇まいの、その美しさに一目惚れしてしまったのだった。20代でたった1人ゴンベの森に入り研究を重ね、世界ではまだ知られていなかったチンパンジーの生態に迫り、新たな発見をしていった日々。やがてフィールドでの調査は研究所に任せ、ジェーンは世界中を飛び回り、資金の調達や講演に勤しむようになり、一年のうちの300日はその活動に当てていたとも、一カ所に留まるのは最大でも3週間だとも書かれていた。その写真集が出てから28年も経つ現在でも、なおも精力的に動いていたジェーンは尋常ではないバイタリティの持ち主であったろうし、年齢を重ねながらのその生活を思えば、いかに心身ともに健康であったのかと、本当に驚かされた。

私にとって、スターのようなそんな人物が2年前、私が暮らす街の大学で講演をすることになり、幸運に恵まれお会いすることができたばかりでなく、絶滅危惧種を描いた画集「RED DATA ANIMALS」を贈らせていただくことができ、しかもその場でじっくりと丁寧にページをめくる姿まで目の前で見ることができたことは、私の人生でも忘れられないシーンのひとつになった。そればかりか、後日直筆のお手紙まで送られてきて「本当に美しい本をありがとう。あなたは素晴らしい才能の持ち主です」と書かれていたのには、飛び上がるほど嬉しかった。私はその手紙のお礼の返事を出した。書きたいことは沢山あったが、かつて読んだ彼女の書籍の中で、最愛の人を亡くされた時のことが書かれてあったくだりに、彼と過ごしたとてもスピリチュアルな出来事や、チンパンジーとの人智を越えた繋がりに惹かれたことや、私も最愛のパートナーNOBUYAを亡くしたが、今でも繋がっていて彼からメッセージが届けられること、狼犬のnociwやDONと暮らしたことで、自然界がより近くに感じられ、彼らが旅立った今もなお、私自身や作品に多大なインスピレーションを与え続けてくれていることなどを綴り、私の愛する魂の家族ですとNOBUYA、nociw、DONの写真を一緒に添えた。ジェーンの手紙の最後に「また、会いましょう」と書かれてあったので「夢が叶うなら、ぜひまたお会いしたいです」と締めくくった。

ジェーンの死後に公開される約束で撮影された、私たち地球人へ贈る最後の言葉という内容の映像を見て、感動とともに更に共感を覚えた。死後の世界や偉大なる霊の存在を確信していること。自然の中にいれば、そのすべてが常にこちら側にメッセージを伝えてくれていること。肉体を去っても意識は生き続けるので、今生での生き方が死んだ後にも影響していくのだと。だから今、地球人としての行いに責任を持ち、決して諦めず、希望を持って前へと進むことがいかに大切であるかを改めて再確認させてもらった。「一人一人がこの地球に役割を持って生まれてきた、かけがえのない存在」だという彼女の言葉に「私は私ができることで、愛と誠意を持って地球のために生ききろう」と強く思った。NOBUYAがよく「その人の死に様が生き様だ」と言っていた。彼もしかり、死の直前まで元気で、アートショーという仕事を立派にやり遂げて果てて逝った。ジェーンもまさに、そういう生き方のお手本のような人生。私も見習いたいと心の底からそう思う。今日ジェーンの手紙と一緒に写った写真を額に入れて、お客様が訪れるnociw galleryに飾った。

ありがとうジェーン、私もあなたを愛する一人です…。