ふるさと

3週間、ふるさとの余市へ母の介護帰省をして帰ってきたばかりだ。

今回も沢山の学びを与えてもらった貴重な母との時間だった。母は想像していたよりも元気で明るく、そんな姿を見ることができて、とても嬉しかった。昨年の8月に骨折して以来、3度も同じ箇所を手術した左腕は、週2回の訪問リハビリの方のお陰で少しづつ回復してきて、ひとりで着替えもできるようになっていた。一番の楽しみは何より食べることで、毎回食事中に必ず「次のご飯は何を食べるのか?」と聞いてくるので、頭の中が常に「次は何を作るか?」でいっぱいだった笑。そんな母が以前から「ぬりえ」に超ハマっている。妹がもう何冊も与えてきたそうだが、塗るスピードが早くなってきて本を探すのが大変だとこぼしていた。だから母がぬりえにハマっている時間は、私も創作にハマることができた。リビングにあるダイニングテーブルで2人で向かい合い、それぞれにクリエイトする時間!こんな風景は、かつては想像もできなかったことなので「すごい!奇跡だ!」と思うほど、心底たまらなく幸せな時間だった。

普段は町内に暮らす妹が毎日実家へ通い、食事を届けてくれたり、身の回りのお世話をしてくれているが、そんな彼女も母が脳卒中で倒れてからのこの3年間、常に母の身近にいることで大変なことも多々あり「さすがにストレスが溜まってきたわ~。自由時間がないし…」と本音を言っていた。この言葉には本当に「ありがとう」しかない。妹には、ただただ感謝の毎日である。私のたまの帰省では、ほんの気休めにしかならないだろうが、それでも妹がちょっとでもホッとしてくれたり、母がちょっとでも楽しくなってくれたりしたならいいなと思う。

家のテレビ画面でだが、母と一緒に映画も観た。父が死んでからテレビを付けることもなくなり、ラジオを聞くこともないので、そういった刺激はまったくない。そこで映画ならどうだろう?と思ったのだ。本人の興味ありそうなものを探して、全編ではなくとも、ところどころでも興味を示してくれたらOK!だった。それから音。今回はいつも必ず持参するインディアンフルートをはじめて忘れてきてしまったのだが、その代わりにカリンバを持ってきていたので、この楽器を毎日奏でてみた。フルートの音色は好きだと言っていた母は、カリンバの音色も好きだと言ってくれ、奏で始めるとソファに横になって気持ち良さそうに目を閉じるのだった。そんな母の顔を見ている時間も私にとって、リラックスできる至福のひとときだった。苦労の多かった彼女の人生において「今が一番幸せ!」と笑顔で言い切っている母。そう言える「今」であって、本当によかったと思う。

今回の帰省では、仁木で農園を営まれている方から、ジュースやジャムの加工品のラベルの仕事の依頼があったり、札幌でイベントをオーガナイズされている方から会場の下見に誘っていただいたりと、新たなご縁も生まれた。どちらの方々も9年前の夏、札幌個展でNOBUYAが突然旅立った直後に開催された、初めての、ふるさと余市での個展のアートショーを観に来てくださっていたそうで、お2人とも「あの時のことは、忘れられません」と言ってくださり、私の心は震え、ただならぬご縁を感じたのだった。というか、またしてもNOBUYAの存在を感じずにはいられなかっのだった…。そりゃそうだよなぁ余市だもんね。私達のふるさとの。これから、面白くなっていきそうな気がする。

余市を出発する朝、キッチンの棚の上にいつも揃って置かれていた2つの箸置きが、ひとつになってツンと澄まし顔で佇んでいた。そういうところが、とても「母らしいな」と思った。淋しさはあるが、また1人の時間に戻れてホッとしている部分もあるのだろう。今の私がそうなように….。

このたびも、まことに、ありがとうございました。