「LOVE SONG」

去る11月3日文化の日、私が暮らす山梨県の上野原で初めてイベントが開催された。

それは私の初めての詩画集の出版記念だった。この本を出そうと思ったきっかけはNOBUYAが構成していたラフを発見したことだった。ARTGYPSYとして2人で日本全国をツアーで回っていた頃、
「ARTGYPSY ARTSHOW」が終わるといつもお客様から言われることがあった。それは「∀さんの絵と詩が一緒になった本はないのですか?」という言葉。ARTGYPSY ARTSHOWとはNOBUYAが私の絵を映像にしてスクリーンに写し、それに合わせて私が自作の詩を朗読して訪れた土地で活動するアーティストに音を添えてもらう即興のコラボレーションである。しばしばそう尋ねられる度に、NOBUYAもそんな本があったらいいかもなと思っていたようで今までに制作した沢山の絵と詩の中からARTSHOWの作品を作る時のように、絵と詩の組み合わせを選びラフを構成していたのだった。もしかしたらその組み合わせでARTSHOWの作品も作ろうと思っていたのかもしれない。ちょうどその組み合わせの長さがARTSHOWの時間と同じぐらいだったから。そのラフをNOBUYAが作っていた頃のことは私も良く覚えていた。だが2017年のNOBUYAの突然の旅立ちとともにすっかりその存在すらも忘れ去ってしまっていたのだ。だがアトリエを整理していた時にそのラフを見つけてあの頃の情景が再び蘇ってきたのだった。旅立ちから2年経ってやっと少し落ち着いた生活が送れている今「改めてこのラフを形にしてNOBUYAへ捧げたい」そう思ったのである。私にできることで彼への感謝の気持ちを伝えたいと……。

今回は映像はないので詩画集の詩の朗読に音楽を添えてもらうシンプルな形での表現になった。音を担当してくれたのは上野原の仲間の「KEIJYU」。今までコラボしてきたミュージシャンにも色んなタイプの方々がいたが彼は事前に詩に添える音をイメージして構築するタイプのミュージシャンであらかじめ詩画集の詩を見せて欲しいとのことだったのですべての詩を彼に渡していた。そんな中KEIJYUから面白いエピソードを聞かされた。詩を見ながら音を作っている時、NOBUYAが傍らにいて色々とアドバイスをしてくれているようだったと言うのだ。最初はポエトリーリーディングの中間に設けてあるMUSIC TIMEの部分で「ラブソングを唄うように!」と示されたとのこと。「えーっ。ラブソングっすかぁー?」とKEIJYUもさすがに戸惑ったとのことだった(笑)。

ラブソングと聞いて思い出すことがある。中学の時からギター片手に自作の歌を唄っていたNOBUYAだったが、東京に出てきて同棲を始めるようになった20才の頃、よく「オレにはラブソングは唄えないな」と言っていた。「何故?」と聞くと「だってさ、ラブソングって色んな人と恋愛経験を積み重ねた人が歌ってるだろ?」と。「そうなのかなー?」と私は思ったが、若かった彼なりのその頃の考えだったのだろう。それからよく「オレたちの関係は決して思い出にはならない」ということも言っていた。それも「何故?」と聞くと「だってさ、思い出になるってのは終わった関係のことだろ?オレたちは今もこうして続いていてこれからもずっと続いていくから思い出にはならないのさ」って。

イベントには額に入ったNOBUYAの写真を飾っていたのだが、ポエトリーのライブが始まった途端、その写真がパタッと倒れたのだった。「NOBUYAさん来てますねー」気づいた人達はみなそう思っただろう。いつもこうしてわかりやすいサインを送ってくれるNOBUYA。その度に「確かに思い出じゃないねー私達。だって見えないだけでこうしてつながっているんだもの!」と、やはりそう思うのだった。いつだってこうして楽しませてくれる、NOBUYAはそういうヤツなのです。(笑)

I LOVE YOU.